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2010/10/06

INTO THE SKY

ナマステ!宝島です。


先週、栗城隊長こと栗城史多がエベレストにチャレンジしていたが、今回も頂上への登頂は失敗に終わった。地上8000M超での高山病と雪崩の危険性が原因らしい。栗城は20歳を過ぎてから本格的に登山を始め、22歳の時にマッキンリーへ登頂したのを皮切りに、エベレストを除く六大陸の最高峰登頂に成功してきた注目を浴びる28歳の若き登山家だ。

僕が中学生の時に観劇鑑賞で「植村直己物語」を観たのは、もう20年数年前の事。西田敏行が扮する登山家植村直己の苦難に満ちた人生とその運命に抗う生き様に、13歳の少年はすっかり魅了されてしまった。いつも絶望の淵で奮闘する植村直巳とは対照的に、栗城がエベレストから冗談を交えネットで日常のやりとりや人生相談などを配信するのは、死と隣り合わせである事を微塵も感じさせず隔世の感がある。

栗城の快活で憎めない人柄とポジティブでストレートなメッセージは、若者を中心に多くの人達から支持されている。困難に遭遇しながらも、その度に弱音や恐怖を包み隠さず吐露する姿は、人間くさく誠実さに溢れている。どのような苦しい状況でも明るさを失わない彼の姿勢に、どれだけの人が勇気と希望をもらっただろう。いろいろなメディアに露出し、スポンサーの支援を受け、多くのスタッフに支えられてエベレスト無酸素登頂にチャレンジしている。頂上を目前にしてアタックを諦めた事は残念だが、一番悔しいのは栗城自身のはずだ。リスクを承知で無理をすれば登頂出来たかもしれない。しかし全体の状況を見通して判断する事が重要なのは、過去の悲劇が物語っている。

植村直己は「冒険とは生きて帰ること」という言葉を残したまま、1984年にマッキンリーの冬山で消息を絶つが、今回の栗城は忸怩たる思いを抱きながらも勇気ある退却を選んだと思う。死んでしまったら全てが終わってしまう。植村直己のように亡くなって「伝説の登山家」になるよりも「陽気な兄ちゃん」のままチャレンジを続けて欲しいと願わずにはいられない。無酸素で世界の山々を登頂する事にこだわってきた栗城のホームページには、彼でしか説得力を持たない言葉が記されている。



国境や限界は、あなたの幻想にすぎない



最高峰で見る星空は、宇宙へ向かっている感覚だという。


 金沢市の野田山(標高175M)からの白山市遠望。地平線上にわずかに日本海が見える。



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